櫻イミト

クォ・ヴァディスの櫻イミトのレビュー・感想・評価

クォ・ヴァディス(1951年製作の映画)
3.0
キリスト磔刑直後の信者たちと暴君ネロ周辺を描いた超大作スペクタクル史劇。エキストラは3万人。監督は「哀愁」(1940)のマービン・ルロイ×アンソニー・マン。

西暦1世紀のローマ帝国。凱旋したマーカス軍団長(ロバート・テイラー)は、前将軍が奴隷から養女に迎えた娘リジア(デボラ・カー)に一目惚れする。しかし彼女は敬虔なクリスチャンで、軍人マーカスの名誉欲や闘争心を避け姿を消す。一方、皇帝ネロ(ピーター・ユスティノフ)は自らの詩の題材探しのためローマの街を大火事にする計画を立てていた。。。

壮大なセットと豪華な衣装は見ごたえがあり、中でも3万人のエキストラを集めた皇帝ネロの謁見式シーンは実際のドキュメンタリー映像を見ているようなスケールだった。

しかしシナリオは少々取っ散らかった印象。飽きることは無く長尺を最後まで楽しめたが、縦軸となる主役二人のロマンス話に強度が足りず、暴君ネロの狂気のほうが目立っていた。そこにキリスト教徒たちの信心の話も絡んできて、ますます求心力の在り処が見つけづらくイマいち盛り上がりには欠けた。

裏テーマはキリスト教の信心のため、キリスト教の知識がないと意味が解らないハイコンテクストな台詞がところどころにあった。

同じ舞台で物語も似ているセシル・B・デミル監督「暴君ネロ」(1932)のほうが個人的には面白かった。大きな違いはハッピーエンドか殉教かの違い。容赦なく残酷なデミル監督に対してルロイ監督の本作は全体的に甘い印象で(ペトロの逆さ磔刑だけはドギツかったが)物足りなさが残った。逆に言えば安心して鑑賞できるのかも。公開当時は興行的に大成功しMGM を破産から救った。

※「クォ・ヴァディス」とは本作にも登場する後の初代ローマ教皇ペトロがキリストと最後に交わした有名な言葉「主よ何処へ?」の意。

※原作はポーランドのノーベル賞作家ヘンリク・シェンキェヴィチの『クォ・ヴァディス: ネロの時代の物語』(1895)。ちなみに同作の非公式改作が「暴君ネロ」の原作戯曲『十字架の徴』(1895)である。

※ソフィア・ローレン(当時15歳)とエリザベス・テイラー(当時17歳)が本作にエキストラ出演している。
ソフィア・ローレンは謁見式のパレードでマーカス軍団長の足元に花を投げた観客役。
エリザベス・テイラーは「アリーナ内の奴隷女性役」とのことだが見つからなかった(海外のファンサイトでも確認ができておらずシーンがカットされたという情報もある)。
※参考 https://cidadaoquem.blogspot.com/2015/10/liz-taylor-estaria-entre-os-milhares-de.html
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