Ricola

小間使の日記のRicolaのレビュー・感想・評価

小間使の日記(1963年製作の映画)
3.6
腐敗したブルジョア…だけではなく、社会そのものにメスを入れるような視線。
パリから田舎にやって来た小間使のセレスティーヌは、仕えている屋敷の住人たちやその周囲の人間をまじまじと観察する。
さらにある事件をきっかけに、セレスティーヌの視線は鋭さを増していく。


セレスティーヌがやって来た屋敷に住むのは、異常なほどにまで婦人靴に執着する主人と、神経質で嫌味な彼の娘、そしてすぐに色目をつかってくる婿のモンテイユ、下品で粗野な使用人の男のジョゼフである。
セレスティーヌはこんな地獄のような環境下においても、自分を曲げることはない。
しつこく誘ってくるモンテイユに対して、はっきり断り「クソ」と言い放つ。
脚フェチの主人の言われるがままにショートブーツを履いて、スカートを捲り上げて歩いて見せ、靴も彼に脱がされる。でも彼女は退屈そうな表情であくびするほど動じていない。
セレスティーヌのことを告げ口するジョゼフに対しても、彼女は面と向かって抗議し罵る。
腐敗したこの小さな世界で、唯一腐食していないのがセレスティーヌなのだ。

ブニュエル作品にしては、気持ち悪さや妄想などが控えめに感じた。
ただ脚フェチは、婦人靴愛好家のおじいさんのおかげでしっかり示されている。
その代わりと言ってはなんだが、社会へのメッセージがわりとストレートに示されているのも、この作品の特徴であるだろう。

セレスティーヌの抵抗および反骨心はかっこいいけれど、もっとグサグサ刺してほしかったし、毒っ気が少し足りないように感じたのが残念に感じた。
Ricola

Ricola