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おかえりのlingmudayanのレビュー・感想・評価

おかえり(1996年製作の映画)
3.0
冒頭でテープの書き起こしをする上村美穂がイヤホンを外すと外界の音が窓から入ってくる。公園のベンチで隣り合った青木富夫(突貫小僧)のお喋りが轟音に変わるなど、この映画では音が効果的に使われている。そして外に出た上村を誰もいない部屋の開け放たれた窓越しに捉えたショットは明らかに異様。その異様さは彼女の妄想へと繋がっていく。「組織に狙われている」といった妄想は今ならQアノンや爬虫類人といった陰謀論になるのだろうか。

上村と寺島進の対立が決定的になるシーンでは部屋の柱が2人の間に挟まる。ラストでも柱越しに部屋を捉えたショットが出てくるが、もはや2人はそこにいない。2人は海沿いで同じ方向=未来を見つめている。

上村が病院に行くことを嫌がってトイレに引きこもるシーンでは、そこから彼女を出そうとする寺島進が長回しで捉えられる。そしてショットが変わり、座り込む寺島の横にトイレから出てきた上村が座って2人は抱擁する。ここでは2人の演技が存分に発揮されており、和解が感動的に表れている。
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