genarowlands

がんばっていきまっしょいのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

がんばっていきまっしょい(1998年製作の映画)
3.8
女子ボート部に高校時代をかけた青春物語。実話だけあって女の子の気持ちの揺らめきが細やかに描写されている。初主演の田中麗奈の素人ぽい瑞々しさは尊い。大好きな町、松山市が舞台で、瀬戸内の島陰ときらめく水面が眩しい。なんとも言えない爽やかな気持ちになった。

女の子の枠を超えたい田中麗奈の演技は、幼なじみの男の子からの告白にも表れる。
「意地のはりかたオレ好きじゃ。ええと思う。」
彼女だからこの告白が純度を増す。

進学校でゼロから女子ボート部を作って、何度も試合に負ける話。一言だとそうなんだけど、その2年間のボートしか考えられない濃密な時間は二度とない大切な時間。

やる気がないように見えるコーチ(中嶋朋子)との関わりの中で自分たちが少しずつ進歩していることに気づいていく。

スポ根のような熱血はなく、淡々と練習メニューをこなす女子高校生たち。ときどき恋ばなもするけれど、男の子よりもボートと食い気と宿題(進学校のため)。1970年代の等身大の女子高校生がめちゃめちゃ眩しかった。

彼女達が漕いでいるのはすごく重い4人乗りのナックルフォア。ボートというとエイトが有名だけど、艇の造りが違うから4人乗りなのにとても重いし、なかなか進まない。女子5人で持ち上げて手で運ぶのは大変なこと。それだけでぎっくり腰になりそう。

しかも淡水でなく、海で練習していて驚いた。あんなに波のない海があるなんて。海水は浮力があるから、淡水でのレースは不利だと思った。砂浜から出艇するのも艇に傷がつきそう。カッターボートの延長線上にあるボート部なのかも。

松山の鍋焼きうどんのお店が出ていてうれしい。女の子が好きなお店。内子の和ろうそくの祭りだろうか。境内中がろうそくで素敵だった。ちょっとだけ道後温泉が出てた。

世の中で努力が報われるのはスポーツと勉強とダイエットだけ(ゲームもかな)。学生時代にたくさん負けて失敗して努力して報われて。社会に出たらどんなにがんばって努力しても報われないことが多い。スポーツとは違う。だからその時代にたくさん努力して報われてほしいと思ってしまう。

ロケは4ヶ月半ほど、映画の中みたいに合宿していたそう。女の子達の体つきが少しずつ変化していたけど、上半身は女優だから鍛えなかったみたいね。脚には筋肉つきはじめていた。


以下、自分語りです

彼女たちみたいに、大学で女子部がなく、試合の時だけと騙されて私も試合前に同じくらいの期間を合宿してレースに出たことがある。力士と似た練習だったから(食べて寝て練習、を1日何クールもする)、10日くらいで体つきが全く変わって友人たちに驚かれた。それまで華奢だったのに厳つい逆三角形レスラーみたいになり泣きそうになった。肩甲骨がくっついて間に傘を挿せた😱彼女たちは試合で報われたけど、私の失敗(ハラキリ=オールが抜けなくなる)で、水を開けていたのに、パニックになりオール戻せず負けて、人生の黒歴史その1になった。

半分トラウマでボートの試合はそれ以降見ないようにしていたのに、なぜだかこの映画を観たくなった。

爽やかな予感が的中。泣きながらゴールしたのは一緒だけど、最後まで一緒に漕ぎ続けた気持ちになれた。彼女たちはあの最後のレースは本気で試合モードで漕いでたのがわかる。上下全身運動を全速力で数分間持続するから、スポーツの中では相当にきつい部類。呼吸が激しくて試合後に喉から血が出るほど。

一緒に漕いで昔の黒歴史を塗り替えられたような爽快な気分です。感謝❣️
genarowlands

genarowlands