どーもキューブ

がんばっていきまっしょいのどーもキューブのネタバレレビュー・内容・結末

がんばっていきまっしょい(1998年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

水面をすべる小さなイキまっしょい



 2010年5月12日 19時21分レビュー

 

1998年アルタミラピクチャーズ提供(他あり)。製作「シャルウィーダンス」の周防正行。撮影長田勇市。脚本、監督磯村一路。

友レビさんレコメンの作品。なっちゃん時代の田中麗奈ちゃん出演青春映画という予備知識でした。

見ている最中「これは、外国か?」と言いたくなるような「異国的美しさ」が顔をのぞかせます。水面に写るキラキラした「水」これを見るだけでも必見かも?

撮影長田さんの細やかなきらめきのような「水」のほとばしりがとても繊細な仕事をなされています。キラキラした水面に左から右にながれる「ボート」。印象的なカットです。

物語は1970年代。高校入学した、田中さん。部活はボート部、女子はない。そんな彼女の意思ある高校部活「ボート」部の日々。実にさわやかで清清しく、自分の部活の姿も蘇ってくるような「ノスタルジー」を感じさせる「映像空間」に放り込んでくれます。

その力が実にみなぎっていました。ロングショットの多用とバストショットによった時の表情に集中してしまいます。

このショットの使い分けも、実に素晴らしい磯村マジックでした。

まず、作中の部員のキャラクターが、変にまがっていない。時代風俗、色恋に泥まみれにならない。

勝利にガチガチにこだわる、アイドル・売れっ子を出す等々青春映画のセオリーをことごとく省略してある感じです。

70年代という時代をうまく利用してキャラを広げすぎず、ひたすら「ボート」に邁進する少女達に焦点を絞っています。

そして「ボート」に我々素人がみても引き込まれる水面の「美しさ」、こぎ手の懸命な「オール」の振り、掛け声、ゆがむ顔。我々観客がボートの世界に漕ぎ出し始めます。

「ボートをこぐ」という動作をこれほど魅力的に撮りあげた磯村監督の映像手腕は必見であります。

そして「水」の美しさ、少女達の健気さ、できなさ、幼さ、未熟さの簡潔、簡素な脚本も良かった。

出演のなっちゃんは勿論良いです。幼すぎてそのまま。つるんとした「ティーンの素」が照らされています。ラストのレースのなっちゃんが、好きです。 


メンバーには、のち塚本作品「バレットバレー」で怪演する鉄火面こと真野きりな。

素晴らしい「あるある(むかつく部門)」教師の有薗芳記。実は磯村作品では「あさってダンス」で二回目の北海道のホタルこと中島朋子さん。  

彼女も本作の鍵の人物、ある意味彼女の「成長」物語なのかもしれません。あと素晴らしく体現するなっちゃん父、白竜。

彼のラスト付近の出演シーンは、親のある一面を鋭く描いています。このシーンも好き。異種な音楽リーチェwithペンギンズも良かったです。

磯村監督の「白」を基調とした色。

水に浮かぶ「小さな少女達の生き様」「ちいさながんばっていきまっしょい」「小さな生き様っしょい」

画面を横切る船とオールと掛け声、声援。ノスタルジックにさせる映像、そよぐ水面、つかるオール、フラッシュバックする過去の自分、想起する過去。そんな思いにさせる「がんばっていきまっしょい」体験でした。

皆様も水を一歩一歩進む彼女たちの小さな「生き、行き、息、イキまっしょい」を感じてはいかがでしょうか?



追伸
磯村監督の「あさってダンス」、ゆうきなえさん見たさで借りた思い出あり。
やや大人のOVA作品。こちらで中島さん、ハッチャけ演技してましたっけ?
どーもキューブ

どーもキューブ