旧ソ連時代のジョージア出身の映画監督,テンギズ・アブラゼによる「祈り三部作」の最終章
スターリン時代の恐怖政治の暗部を鋭く描いた喜劇。
ジャケットにも載っている本作の独裁者が、もう夢にも出てきそうなくらい強烈キャラでした。
反体制を訴えかけるシンボリズムと、独特のツボを持ったシュールレアリスムの調和。
特に室内のカットは、インテリアの調度や色遣いなど、ブレッソンのような格調の高さを感じました。
本作は、ゴルバチョフによるペレストロイカの前に制作されたもので、その体制批判的な内容から上映禁止となりフィルムも廃棄寸前となりました。
エンドロールに「グルジア・フィルム、1984年」とありましたが、あえて年号を制作会社と共に明記させているところに関係者の熱い思いを感じます。
当時のソ連において、本作が公開されるとは誰も期待していなかったのでしょう。
本作は1987年にソ連でも公開されました。
そこにはジョージア人のソ連外相,シェヴァルドナゼ氏の大きな努力があったと言います。
現在、ロシアとジョージアの間では戦争が起こっていますが、本作も両国間の歴史の勉強にもなる大切な作品だと思います。