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懺悔のbennoのレビュー・感想・評価

懺悔(1984年製作の映画)
4.5
旧ソビエト連邦時代のグルジア共和国(現ジョージア)で1984年に製作された作品…。ゴルバチョフによるペレストロイカの前、旧ソ連の過去の悲劇を真正面から扱い、スターリン批判ともとれる問題作…。

本当ならば作られたこと自体が奇跡…検閲を潜り抜け上映されることも奇跡…当時、旧ソ連外相で後のグルジア大統領シュワルナゼの尽力に依るところも大きかったようです。


ストーリーは至ってシンプル…。
旧ソ連支配下のある街で、長く市長を務めたヴァルラムが死去し盛大な葬儀が行われましたが、その翌朝から何度となく遺体が掘り起こされるという怪事件が続きます…。やがて捕まった犯人は女性ケテヴァン…。

彼女は法廷でなぜ両親が処罰させられなけねばならなかったのか…非業の死を遂げた両親に対する思いや独裁的な政圧に対する怒りを訴えます。「決して市長を墓の中では眠らせない!」と…。


市長にとって気に食わない人間は次々と投獄されました。反体制派の危険思想の持ち主だから…というのはあくまで名目に過ぎません。気に入らない人間であれば、事実を歪曲してでも投獄してしまう。

彼は生前、孔子の言葉を捻って「我々は不屈だ。決意を持てば暗い部屋でも猫を捕まえることが出来る。たとえ、そこに猫がいなくてもだ…。」と言っていました。

罪のない人間を罪人にでっち上げ粛清を行っていたのです…。

ただ一方で、ブラックユーモアや人間観察が見事!
独裁者である市長はファシズム丸出しの人物です。当然チョビ髭は分かりやすくヒトラーを揶揄するかのよう…しかし黒い制服に腕章は明らかにムッソリーニ…。

その役と彼の息子の二役を演じたのはアフタンディル・マハラゼ…。鬼気迫る演技と遊び心満載の監督の演出によって画面に釘付けです…。
因みにジャケ写の男性が強烈なインパクトの市長です。

裁判が進むにつれ、亡き市長が犯した許し難い罪に初めて真正面から向き合う息子と孫…彼らの苦悩と絶望が浮き彫りになります。

そして息子は神父に告解…彼が罪の意識に苛まれる様子は非現実で幻想的な世界を映し出します…。

ラストは「えっ!! 」というなんともブラックユーモアに富んだ終わり方…。このラストのおかげで上映が許されたのかも…と推測したりもします。

現在ジョージアとロシアは未だ危機的状況が続いていますが…当時のグルジアの作品が観れることはとても有難いことです.:*


thanks to; ゴリアテさ〰︎ん܀˚*𓂃 𓈒𓏸𑁍
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