砂

懺悔の砂のレビュー・感想・評価

懺悔(1984年製作の映画)
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テンギス・アブラゼ「祈り」三部作のうちの三作目。三部作と言ってもつながりがあるわけではない。二作目は観ていないのでコメントできないが、一作目の「祈り」とも通ずる、キリスト教に起因する罪と罰が政治色強く描かれた作品だった。
話の展開自体はわかりやすく、社会主義による粛清がじわりと及ぶ長丁場の回想シーンは切実ゆえに迫力がある。非常におそろしさを感じた。独善的な構造であるため罪のよりどころが不鮮明になってしまう全体主義と対比するように、終盤では個人の罪へと焦点を当てそれがタイトルが意味するものへと繋がっていく。
グルジア激動の時代ゆえ、家族の世代間の隔絶もわかりやすく鍵となっている。
「祈り」に比べると映像的な美しさはやや控えめであるが、扱っているテーマが人間の持つ根本的な弱さと欺瞞であるために、普遍的な強度を持って今なお(むしろ今も世界では起きていることである)すばらしい作品だと思う。

なお本作はソ連検閲下で制作されたという事実がある。日本では2008年に公開されたのが初めてとのことであるが、時を隔てても時代の空気や苦悩を鮮明に刻み、後の時代に遺すこともまた映画の持つ力であると改めて考えさせられた。映画は時代の鑑賞者が消費するものばかりではない。
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