アラカン

ナチュラル・ボーン・キラーズのアラカンのレビュー・感想・評価

3.9
ミッキーが持つ信条は結局幼少期の原体験から来る衝動の正当化でしかなく、そこを突いたのがインディアンの老人であった。事実彼の存在によりミッキーは殺人の認識に変化が顕れる。しかし彼自身がその信条と決別するためには付きまとうものが増えてしまった。セリフの通りウェインはその意味でまさにうってつけの人物だったのだろう。
マロニーはまあ単純にネジ外れたバカ女なんだろうな。

今では世界の三大禁忌とされている殺人 食人 近親相姦。後半ふたつは科学的知見による身体への影響という側面から並べられていることもあるが、倫理的観点で見るとこの3つが禁忌とされているかどうかは場所や時間によって異なっている。
我々ジャポネも江戸時代が始まるまでは侍の価値観では殺人が当たり前であった。藤原家、ハプスブルク家、エジプト王朝など古来多くの支配階級では近親相姦も蔓延していたし、食人も宗教観や死生観から行っていた民族もいる。
昨今過熱するジェンダー論もユダヤ的価値観が拡大・浸透・支配するまでは世界的に多様な性指向は当たり前に受け入れられていた。今を生きる私たちが今の常識を以て何かを断罪する時、別の価値観が深淵から私たちに襲いかかっても文句を言えないということは確かに理解はできる。しかし納得はできない。それを認めてしまえば社会秩序を脅かしてしまうから。結局生き残り繁栄した考えが正義であって、その意味でこの世界において彼ら二人は紛うことなき悪であるが、しかしあの刑務所、そして彼らが殺してきた全ての人間たちに対しては彼らは紛うことなき正義であった。
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