むっしゅたいやき

私はモスクワを歩くのむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

私はモスクワを歩く(1964年製作の映画)
4.3
鑑賞記録。

夏の雨―。
何とも瑞々しく、爽やかな余韻を残す作品である。
ソヴィエト連邦、ゲオルギー・ダネリヤ監督作品。

本作は60年代ソ連の若者の姿を映した青春劇である。
これはキューバ危機後、フルシチョフ政権下の「雪解け」時代と一致しており、核戦争の危機を脱し米国との関係改善が推進された時期と重なる。
本作のやけに開放的できらめいた雰囲気にも、この空気は現れている様に見受けられる。

本作のプロットは幾つかのエピソードを挿入しながら、或る若者のとある夏の一日の出来事を描く物である。
各々のエピソードは独立して笑いやほろ苦さを与えるが、注目すべきはその行間であり、地下鉄や徒歩等を駆使しモスクワの街のあちらこちらへと移動する為、さながら彼等と共にモスクワの街を巡っている様にも錯覚させられる。
切り口はヌーヴェルヴァーグ調であり、物語に直接関係の無いカット、会話が幾つか見られるが、嫌味にならず主人公の活き活きとした印象をいや増す結果となっている。

ラスト五分の展開、カメラワークは特に秀逸であり、青春のほろ苦さ、そして未来への希望に満ちている。
是非とも国内正規ディスク化して頂きたい作品である。
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