くもすけ

私は死にたくないのくもすけのネタバレレビュー・内容・結末

私は死にたくない(1958年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

■Bloody Babs
原作はピューリッツァー賞受賞作家の実録犯罪もの。「冷血」に先駆けて死刑囚を題材にしているが、対象へのコミットはあまりフォーカスされずどうとでも取れる。グレアム本人は赤毛で事件時30歳。写真見るとヘイワードとだいぶ印象が違うような
彼女の演技は重くたるいのだが、目隠しをされ足元から立ち上る白い煙を吸い込む鼻だけは、そのためにキャスティングされたのではないかというほど凛々しかった。

老婆殺害強盗未遂事件のシーンはない。かわりに「傷だらけの栄光」同様ネーミングネーム、召喚状と証言台で窮地に陥る裁判劇の趣き。

映画が公開されると批評も好意的で、容疑の真偽はともかくガス室の残虐性を非難する意図は受け入れられたようだ。
全米7箇所(西部に多い)でガスによる死刑が行われていたが、ナチのガス室の実態が広く知られ、またコストが高くつく理由から廃れ、最後のガス処刑は1999年。

■ガス室
サンクエンティン州立刑務所のガス室の描写が突出している。
ガラス張り八角形の密室に群衆が群がるなか囚人が運ばれてくる。私服の着用は許されていたようだが、通常裸足で施行されるため監房からの通路にカーペットを敷き継いでいる。バーバラはパンプスで押し通し、看守からアイマスクを借りる。

ガス室内の温度は、ガスが水滴になるのを防ぐため最低でも華氏80度(摂氏26度)を保ったようだ。少し暑いくらい。

合衆国最高裁検事長の部屋から刑務所長室に手続き続行命令の電話が入る。ガスのレバーを引くまでは延期が可能なため、所長室では電話の側から離れられない。

デスウォッチリストを手元に抱えたスタッフが待ち構えるなか、レバーを引きシアン化合物の顆粒が亜硫酸のはいった容器に落とされると、ガスが発生する。ガスを吸い込むと細胞レベルでの酸素の利用が妨害され細胞が死滅する。とくに呼吸器系と心臓に強く働き、通常呼吸不全で死に至る。胸に着けられた補聴器がガス室の外まで繋がっていて、受刑者の状態をモニターしている。

ガスを深く吸い込めば10秒で意識を失うが、息を止めたり呼吸を遅くしたりすれば、それだけ刑も長引く。そのため執行吏は適切なタイミングで受刑者に息を大きく吸うタイミングを教えるそうだ。映画では目隠ししているので「わかりゃしないじゃない」とぼやいている。