mingo

埋もれ木のmingoのレビュー・感想・評価

埋もれ木(2005年製作の映画)
3.9
メイキングは絶対必見。構図、ひかり、色、現場すべての人の力の結集が素晴らしい。「埋もれ木」を作った特殊造形美術と全シーンの照明さんの力なしでは誕生しなかった本作からは見えている現実をそのままに描くのではなく、その向こう側、周辺をやわらかく捉え直す映画の底力を垣間見ることができた。

寄りはほぼなく、中間距離からニュートラルに撮られた写真的な映像表現が心地よい。
文学的な映画が好きな芸大生とかが真似して撮りそうだけど、小栗康平にしか決して撮れない。「泥の河」からの流れを追うと映像という媒体に対しての深度の深さが計り知れない。CGの使い方て実写ではできないことを実現するために用いられるけど、本作のように本来は物語を語るための手段でしかないのかもしれない。

「物語は乗り物。それに乗って私たちは生きているだけ。」「じぶんで選べるのかな?」「だって物語は言葉だから。」
小栗康平の人生観や、映画で伝えようとしていることが詰まった一本であったように思う。人物描写が主体ではなく、あくまで物語が主人公。

「記念写真て良いよね。みんなが同じ方向見ることなんてないよね。」には誰もがグッとくる。人は忘れることによって生きている。映画ではやりすごされている風景や感情、見逃している物事の中から「こういうことが大事」とか「これは美しい」といったものを組み合わせて作られているが、まさに映画の醍醐味を、小栗美学を通じて感じることができる。

小栗康平は作家性が強い映画監督だが、全作品その都度色が違うから観ていて飽きない。傑作。
mingo

mingo