せみ多論

ノートルダムの鐘のせみ多論のレビュー・感想・評価

ノートルダムの鐘(1996年製作の映画)
3.8
ディズニー映画として観たら異質な印象が非常に強く感じられた。
表現や描写のドギツさ、展開、結末。
そういう予想していなかったところはまず楽しめた。

原作は映画とは異なる内容でもっと悲しい結末。じゃあ映画はどうだろうか。これはハッピーエンドなのだろうか。カジモドはこれからも鐘を叩き続けるのだろうか、彼は本当の愛に巡り合えるのだろうか。そんな物語の外のことを考えてもしようがないのに、心を乱される。カジモドに幸あれと思ってしまう。

ヒロインも他のディズニープリンセスと比べて異質だ。エスメラルダは妖艶で淫靡、傾国の美女といっていいのではないだろうか。物語によってはヴィランでもおかしくはないような危うさを秘めた魅力がある。

原作での結末には処刑されたエスメラルダの白骨に、寄り添うように異様な骨格の男の白骨が…とある。それまでの展開も考えれば、嗚咽ものだと思う。死して尚一途な想いを抱くカジモドの心情を察すると胸が痛む、例えエスメラルダが自分を愛していなくても、カジモドは彼女の亡骸の傍で最後の時を過ごしたのだと思うと。

映画では序盤のシーンで祭りの場でカジモドが涙するシーンが一番好きだ。多分あたくしはそこで引き込まれたのだと思う。
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