ふたーば

ヒートのふたーばのレビュー・感想・評価

ヒート(1995年製作の映画)
3.5
おもろいけどこの人らいっつもこんなことやってんな……

ゴッドファーザーでもあった「プライベート全然ダメでも仕事に打ち込んじゃうカッケェ俺たち」っていうマッチョ世界観だけをさらに推し進めたような映画。

そういう自己陶酔に対する罪悪感が根底にあるからか、登場人物が家族や恋人を大事にしたがっている描写が結構多い。そうだよなぁ凶悪犯罪者だってみんな人の子だもんなぁ、なんて思わせたのも束の間、大事な人の信頼をスッと裏切ってあっけなく死んだり、妻を人質に取られて果ては一緒に殺されたりしてて、全然言葉と行動が一致しない。犯罪稼業がいかにろくでもないものかが分かる。

『フレンチ・コネクション』の時も思ったけど、このレベルになると警察と犯罪者の区別はだんだん曖昧になるよな。アル・パチーノは一応市民の味方なんだけど、正義感や信念のためというよりたまたま警察側についただけという感じ。脅しや取引もためらわないし暴力さえ平気なのだ。

翻ってデニーロの方はというと「知的で孤独な犯罪者」のファンタジーの権化みたいな存在で、恋人との出会いも別れもなんか大味で現実味がない。アンニュイで何考えてるか分からないけど、ただ目的のためなら確実な方法で手早く相手を始末することも全く厭わないところとか、確かにかっこいいかもとは思う。

やっぱりなんやかんや、名優だから一人の人間の苦悩を共感できたような気にさせてくれるので、その点では普通に楽しめた。

ただまぁ自分があんまりこういう世界観に多分イマイチ乗れないせいか、この人らがなんか言うたびに「……とか言っちゃう俺カッケェ〜!!」って声が聞こえてしまう。というか、なんか家庭を見てる余裕なんてない自分の忙しさを美徳のように語るキモい上司を思い出しちゃうんだよな。でもこれもまた、世の中の一部の人にとっては必要な宗教、必要な夢なんだろうと思う。

最後は納得の終わり方だった。主役たちの恋人や家族たちの心情へのクローズアップどころかセリフさえもろくに与えられていないのは、そこに関心を向けた映画ではなく、あくまでその世界に生きる男の生き方にのみフォーカスした映画としては、ある意味筋が通っている。

けどほんとに、この二人を出してきてしまうと「劣化版ゴッドファーザー」という目でしか評価できなくなる、と思った。それでいうと、おもろいけどまぁまぁどまりかな……
ふたーば

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