「『アレクサンダー大王』以降で私がやりたかったのは、歴史を後方に置くこと。そのうえで、人間を撮りたかった。歴史を信じ、歴史がもたらすものを担い、全てを失った人間を。」
映画監督である主人公の現在と劇中劇の物語が編み込まれるように紡がれていく。
「りんごが腐った」
30年越しに戦争から帰った爺さん。
娘からドヤされ、村人たちからも厄介者が戻ってきやがったと煙たがられ憎まれる。
最期まで寄り添ってくれたのは妻だけだった。
「夜明けだ」
「いいですよ」
時代に背中を向けられ、妻と共に、その微かな繋がりに終止符を打つ。