TaT

シテール島への船出のTaTのレビュー・感想・評価

シテール島への船出(1983年製作の映画)
4.5
映画監督であるはアレクサンドロスはオーディションで気に入る役者を見つけられず、ふと目に留まったラベンダー売りの老人に役を任せようとする。そこから亡命し32年ぶりに祖国に帰ってきた老人を主人公とした劇中映画が始まる。

現実と劇中映画という虚構の間にあるものを描くと同時に老人の32年という期間の空白も描く。老人が覚束ない現在に佇む姿は確かに幽霊のようで、変化した時代への拒絶や墓や枯れた一本の木は失われていくもの、失ったものへの詩情的嘆き。

無情感と愛、悲嘆と希望の間を漂うようなラストが美しい。
TaT

TaT