おなべ

オリーブの林をぬけてのおなべのレビュー・感想・評価

オリーブの林をぬけて(1994年製作の映画)
3.7
◉《アッバス・キアロスタミ》監督作品“ジグザグ道三部作”のシリーズ3作目。前作『そして人生はつづく』に登場した青年の婚約申入に焦点を当て、メタ的に物語を紡ぐ。

◉実話ベースのメタフィクションに被せる形で入れ子構造を展開。単なる劇中劇ではなく、この「実話ベース」という要素が複雑に感じる理由かもしれない。シリーズ1作目からちゃんと順番通りに観れば、理解できるはず。

◉『友だちのうちはどこ?』で主演を務めた《アハマッド》君が登場。体格も良くなり精悍な顔付きになっていて、成長した彼の姿に少しだけ嬉しくなったり。

◉冒頭の大胆なメタ発言から笑える。それすらも作品に組み込んでしまう監督の演出に一本取られた。映画の撮影と題して描く若者の恋模様は、当時のイランという国の実情・社会制度を暗に示すと共に、家族や親戚、性別における力関係を仄めかしているという、監督らしい演出。












【以下、ネタバレ含む】












◉ラストカットに唸らされる。ジグザグ道を超え、オリーブの林を抜けて、それでも諦めないホセイン。ロングショットの長回し、BGMの使い方、シンプルだけど秀逸。良かったね、ホセイン。

◉この世の中(日本)では、真っ直ぐすぎる愛情は却って相手に不快な想いをさせる可能性があり、しつこい男は嫌われる運命にあるらしい。ホセインのように純粋だけど不器用、それでいてストレートな男は絶滅危惧種。そんなホセインの愛情表現を見習いたい。
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