高い壁に囲まれて徹底的な安全性と利便性に優れた生活は、一見すると完璧で守られているような安心感があるのかもしれないけれど、洗脳され心や体まで管理されているような底知れぬ不気味な不安に陥りそう。
幸せそうに見えていても
感情をなくしたような住人たち。
そして次々に忽然と消えていく住人。
政府に隠されている秘密、陰謀…。
理想郷に隠された幻想…。
冒頭に流れるエピソードに触れただけでも
ゾッとするような世界…。
安全に守られていると信じ込んで穏やかに暮らしている人たち
陰謀に気づいていながらも抗うことを諦めた人たち
標的にされ自分の身を危険に晒しても陰謀を暴こうとする人たち
建物、風景、武器、攻撃、戦い方…
そのすべてが、近未来都市を舞台にしている作品だからこその斬新な描写の連続で不気味さが一層増しながらも、正直イマイチのめり込めなかった前半。
展開そのものよりも主人公イーオンを演じているシャーリーズ・セロンの、完璧で美しいプロポーションを生かして魅せる衣装や動きの演出に目が釘付けになる。
鍛え上げられているのに筋肉質すぎないしなやかさもあってかっこいい。
なので、
役者陣を観る作品かな
と思いきや…
真相に近づくヴェールが1枚1枚めくられていくとともに、誰が真の敵なのか、事件の裏、そしてそのまた裏…
複雑に絡み合うように仕掛けられた脚本や演出が顔を出してきたけれど、個人的にはもう一捻りの展開も観たかった、
斬新すぎる設定のSFという描写とは別に、ウイルスや治療法、副作用、医療や科学の発展によって現実の世界で今まさに起きていることやこの先に起こりうるだろうという問題を扱っている深みに気付く。
いつか終わりが来るからこそ…
儚いからこそ…
その一瞬一瞬の輝きが美しい。
限りある一度きりの命を自分らしく
一生懸命生きるというメッセージが込められている作品。