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駅前旅館のりのレビュー・感想・評価

駅前旅館(1958年製作の映画)
5.0
私個人としては最も好きな邦画の一作です。駅前シリーズの第一作目であり、本作は井伏鱒二原作のため、ストーリーにコメディの要素がありながらも原作に沿って作られており、この点においてコメディ色の強い後の駅前シリーズ作品とは一線を画していると思います。
また、原作が井伏鱒二であるためストーリーの土台がしっかりしており、一流のストーリーに、これまた森繁久彌をはじめとする一流の俳優陣が演じており大変クオリティの高い作品になっていると感じます。
本作には時代に翻弄される番頭という大衆側にありながらもマイノリティな存在が主人公として描かれており、そこは正しく井伏調というような作品であり、これに森繁の何とも言えない哀愁ある演技が加わり格別である。特に森繁演じる主人公が、飲み屋の女将に対し「四十男の侘しさよ」呟くシーンが良く、私は何度も本作を見返してしまっています。
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