とちこ

東風のとちこのレビュー・感想・評価

東風(1969年製作の映画)
3.7
『東風』(1970)
ゴダールは、「東風」以前に作っていた「プラウダ(真実)」において、自分の撮影スタイルに限界を感じていた。(ゴダール全評論・全発言集Ⅱp110)
そこから抜け出せたのはゴランが「東風」で果たした決定的な仕事らしい。その仕事とは「編集を、もはやただ単にカットを組み合わせたりコラージュしたりすることとみなそうとするんじゃなく、カットを組織化することとみなそうとするものだった」(同前p111)。
「正しい映像ではなく、ただの映像(36:52~37:07)」という考えかたもこのときゴランから学ぶ。



- 政治的な言説は正直ほとんど理解できなかった。例えばマルクス・レーニン主義とか毛沢東主義とか。ただ、ブルジョワジー的なな思考や言説に対して批判的であるというのは理解できたし、その延長線上でハリウッド映画に対しても「帝国主義的」という主張がなされていた。ただ自分はやはり「教養主義的な固有名」などをバンバン出していくゴダールの側面はあまり好きではない。
- 面白かったのは、ハリウッド映画の代表的なジャンルである「西部劇」を、この作品ではものすごくダサく表現したいた。例えば、補助の人がついている状態で、馬にまたがっているカウボーイ風の男などがそれに当たる。
- 素晴らしかったのは、この作品の製作者たちが討論している音声を流していたところ。そこで、「ゴダールが言っていることは間違っている」という声が聞こえるところはなんかすごい!! この作品を作るにあたってガチで討論しあっていたのだろう。「背後」を見せている感じも伝わってくる。
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