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東風のarchのレビュー・感想・評価

東風(1969年製作の映画)
2.8
ジガ・ヴェルトフ集団として民主的な組織体制で政治的な作品を作っていた時期のゴダール作品を初めて鑑賞した。

まず構造について。
ゴダールは1968年5月の五月革命に感化され、資本主義の手先とも言うべき「映画の造り手」である自身を自己批判し、これまでの自身の映画を否定して"映画"で実践的な政治闘争を試みようとすることになる。そんな彼の意思が反映されているかのように、映画はメタ的なメイクシーンから始まり、撮影裏での話し合いなどを挿入することで、フェイクとしての物語らを棄てることで"現実"に接近しようとしている。『ウィークエンド』とかに近い寸劇のような演技で進む物語のない場面の連続、そうさせるのは映像とは別進行するボイスオーバーの説教じみた政治的主張があるからだろう。寓話的ともいえるが、それ以上にゴダール的な映像と音の使い方だ。
彼のプロレタリア思想やマルクス主義への傾倒っぷり、特に1968年5月への執着っぷりは凄まじいのだが、面白いのは自己批判的であり、尚且つ結局「映画についての映画」になっているところだ。
映画で何が出来るのかを模索しているのが伝わってくるし、映画が現実に抗えない、資本主義に抗えないことに必死に抵抗していることも伝わってくる。

改めてゴダールという人が、普通じゃないというところでわ勝手に苦悩しているのが伝わってくる作品だった。
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