踊る猫

東風の踊る猫のレビュー・感想・評価

東風(1969年製作の映画)
4.0
そんなに(ゴダールの作品としては、という但し書きがつくが)面白くない。というのは、この映画はモノローグ的に進むからだ。他の作品(名作『気狂いピエロ』『勝手にしやがれ』など)が、男と女のロマンスを骨組みだけでも用いて描きロマンスの「色」をつけていたのに対し、この映画はナレーションだけが空回りしてしまい「色」がない。エンターテイメント的でない、という。色彩美や草原のショットにゴダール的なものを見出だせるが、ゴリゴリの政治思想が語られているようで実はナンセンス/ジョーク、という重いようで根本的に何処までも軽い映画である。そして、そんな軽い映画を重いものが持て囃された時代に涼し気な顔で撮ってしまったというところにこそゴダールの天才があるのではないか。浅田彰の哲学書を土屋賢二を読むようにして笑いながら読むそのやり方で、この映画も笑い飛ばしてしまって構わないのではないかと思う。
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