櫻イミト

蛇女の脅怖の櫻イミトのレビュー・感想・評価

蛇女の脅怖(1966年製作の映画)
3.5
蛇女の秀逸な造形メイクが有名な英ハマープロの怪奇映画。監督は「吸血ゾンビ」(1966)のジョン・ギリング。

イギリスの田舎村。ある屋敷の当主が突然苦しみだし顔をドス黒く変色させて急死する。数日後、主人の弟ハリーと妻ヴァレリーが屋敷を引き継ぐため越してくる。しかし村人はよそ者に冷たく、相手をしてくれるのは酒場の主人トムだけ。ただし兄の死因については口を閉ざすのだった。やがて、隣の屋敷に住む宗教学者フランクリン博士と娘アンナ(ジャクリーン・ピアース)と知り合うが、親娘は何か大きな秘密を隠していた。。。

まさに古き良き怪奇映画だった。ギリング監督は「吸血ゾンビ」が良作で、本作も安定した職人技の演出を楽しんだ。ハマープロのホラーと言えばテレンス・フィッシャー監督が看板だが、個人的にはギリング監督のほうが人間ドラマを巧く描いて好み。村で唯一主人公夫婦の味方となるトムが、心的ダメージを受けた二人を少しでも癒そうとココアに大きな角砂糖を一つずつ入れる。その繊細な描写が監督の演出術を象徴している。

蛇女の登場シーンは少ないが、造形が非常に良く出来ていて怪奇映画としての魅力は充分。その運命はもの哀しく、女クリーチャーとしての個性を際立たせていた。研究のため東洋を周った設定も娘のシタール演奏と父親の日本刀に反映され、オリエンタルな怪奇趣味を醸し出していた。

派手ではないが堅実な演出が光る怪奇映画の良作。
櫻イミト

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