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コネクション マフィアたちの法廷のRのレビュー・感想・評価

4.2
硬派社会派シドニールメット監督による実録マフィア法廷モノ、しかもこの物々しい雰囲気のトップ画像、一体どれほどヘヴィーな作品であろうか、とドキドキしながら見始めたら、あれ、何だか軽やか。音楽は軽快なスウィングジャズ。ジャケ写のダークで極悪で無口そうなおじさんも、すっとぼけでおしゃべりで人間臭く、誠実でユーモラス、若干あざとさすら感じる演技に、期待してたんとちがう……と序盤は戸惑いを感じたのだが、コメディタッチの娯楽映画モードに気分を切り替え。大いに楽しめました。ストーリーは、アメリカ史上最高に長引いた刑事事件裁判、イタリアンマフィアのルッケーゼ一家20人の被告人に対する76件の容疑を審理がテーマってことで、ガッツリ法定劇。当然全員がそれぞれに弁護士をつけてるんやけど、ただ一人、上記のおっさんジャッキーのみ自己弁護。ジャッキーは麻薬取引の罪で30年の刑を受けてて、減刑してやるから仲間を裏切って情報を提供するよう司法取引を持ちかけられるのだが、迷うことなくお断り。自分を殺そうとして何発も銃弾を撃ち込んできた従兄ですら恨みっこなしで赦してやるくらい熱いファミリーマン。だが、ずぶの素人が一人きりでバリバリやり手の検察官と張り合えるわけがない…と思いきや、ジャッキーのアホ丸出しの人間的愛嬌と、鋭い直感を駆使した巧みな論述で、陪審員たちのハートをとらえていく。けど、法廷の権威を軽んずるような暴言やらアホ発言も多く、何度も裁判長に注意される。この裁判長のすばらしい法廷さばきが実に気持ちよく、頭の硬いガチガチの権威一本って感じとは正反対。厳しいけれど、柔軟で、人間的な深い情けがあり、どんな発言に対しても公平に耳を傾ける。実際の裁判の記録からセリフなどを脚本に落とし込んでるらしいんやけど、こんな裁判があり得るだなんてほんとアメリカは懐の広い国だなーとしみじみ。さて、最終的に21ヶ月も続き、無数の証人が証言することとなったこの裁判、ワルにしか見えないルッケーゼ家の皆さんの命運やいかに⁈ 全編コミカルさと緊張感の両方が緩むことなし。さすがシドニールメットの分かりやすい鮮やかな展開に目が離せない。そして、本作でお初にお目にかかりましたヴィンディーゼル、髪型変やし、とっつきにくさはあったけど、だんだん愛着が湧いてくるステキなおっさんをノリノリで演じてて良かった。あと脇役で一瞬出てくるアナベラシオラの炎のような熱演には釘づけ。その他すべてのキャストもパーフェクトで素晴らしかった。ルメット作品としてはまったく無名やけど、ファンでなくても時間を忘れて大いに楽しめる一本だと思います。やっぱルメット好きやー。
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