camuson

第9地区のcamusonのレビュー・感想・評価

第9地区(2009年製作の映画)
4.8
南ア、ヨハネスブルク関係、なら面白くないことはないだろうと。
たぶん、それなりに社会派映画で、怖いもの見たさで見聞広げるのもいいかな
くらいの気持ちでした。

そんな軽い気持ちで行ったところ見事に裏切られました。

いやー、すごく面白かったです。
娯楽映画でここまでツボにはまった作品は今までないですね。
最上級に楽しめました。

第9地区と呼ばれるスラム化したエイリアンの難民キャンプを移転するために、
板きれの寄せ集めでできた彼らの住居を1戸1戸訪問して、
移住承諾書にサインをもらうという大役を担った男の物語です。


低予算映画的なバカバカしい発想に基づく世界を、
それなりの予算を使って徹底的に創り込んだところがすばらしく、
その上で、大役を担った男の肉親、知人、関係者の声、専門家の解説をまじえた
ドキュメンタリーという体裁に仕上げています。

この仕掛けは、スクリーンに描かれる世界に現実味を与え、
ちょっとした悪ふざけを織り込んだ際には、増幅装置として働き、
けっして高尚ではない、というか、むしろ下品でありながら、
抑制の効いた笑いを誘うのに一役買っています。

過去作品の成功から、貪欲なまでに引用し、混ぜ込んで、
あの手この手を尽くしてくるのですが、
話の芯の部分は、計算された不調和が一貫していることから、
中だるみがなく、先が読めず、非常にスリリングです。

後半、主人公チームvs軍にスラムのギャングまでもが絡んできて、
ギャングのボスが主人公を喰らおうとしてきます。
土着信仰的カニバリズムなのか、ゲーム脳なのかわからないのですが、
ここで南アを舞台にしたことが生きてきます。
ヨハネスブルクブランドの凄さと言いますか。
「南アでは当たり前」と一言言われたとしたら、
「南アなら仕方ないね」と返すほかありません。
言われないとは思いますが。

短い時間の中に、裏切りあり、友情あり、
子供による癒しあり、夫婦間の愛情あり、
何でもありですが、破綻してない。最後には涙あり、寓話性あり。

書いてるうちにもう一度観たくなってきました。
camuson

camuson