ブルースたかぎ

第9地区のブルースたかぎのレビュー・感想・評価

第9地区(2009年製作の映画)
4.2
久しぶりに見たけど良かったですね
初めて本作を鑑賞した時、それと近い時にたまたまエレファントマンという映画を見てました
どちらも共通して感じたことは、人間は外見による差別や迫害を拭えないということ

最新VFXにより高度に描かれたエイリアンはとてもグロテスクでした

本作は昆虫型エイリアンがたくさん乗った宇宙船が南アフリカ上空を浮遊し、中にいた多数のエイリアン難民を一つの区域に居住させているという設定です
それが第9地区ですね
知能が低く、卵生により増殖する俗称エビと呼ばれる種族
見た目は明らかにヴィランなんですが、本作が面白いのはエビよりも人間のが暴力的に悪く描かれてるんですよね
反対にエビたちはその性質は置いといて、非常に純粋なんです
主人公ともいえる異名クリストファーのエビは他のエビと違い賢い
科学者タイプなのか
ナメック星人にもネイルみたいな戦闘タイプがいますからね、他の働きアリとは違うといった感覚です
そのクリストファーがかなり良いやつ過ぎで
自分は何度も裏切られ、迫害されてきたのに、それでも主人公ヴィカスに対し、義理堅く、約束をはたそうとする
なんとも模範的な文明種族
それに対してヴィカスは頼りなく利己的で暴力的
主人公としてはあまりカッコ良いとは言えないキャラですが、それでも最後はきちんと主人公になってくれました
最後の戦いには胸を打たれました

エイリアンや武器が精巧にSFに描かれている他にも戦闘シーンもなかなかリアルで面白かったです

人間とは違う見た目で、人間から見て清潔ではないライフスタイルを持った文明種族を相手に人間はどう対応できるか
特にその相手が力を持たぬ難民であれば、権利云々考えずに自由を奪って管理することが手っ取り早いでしょう

この先、実はゴキブリが高い知能とコミュニケーション能力を持っていることが明らかになった場合、人間はどのような対応が取れるでしょうか
仲良くできる人は少ないですよねきっと
不潔なイメージは拭えない

本作でのエビは現実社会における何かのメタファーなのかも知れませんが、とにかく人間の排他的性格と暴力性が垣間見れる映画です
そうやって進化して今日まで生きてきたんだからそれで良いんです

漫画寄生獣でのセリフ
「人間以外の生き物の価値を誰が決める」
難しい話ですよね

最近は豚や鶏などの家畜に対しても、尊厳ある飼育をなどとの考えが広まってるみたいですね
虐待することを除けば、結局食べるんだから同じではないだろうか
たかだか飼育法で、命を奪う罪は拭えない
そうやって折り合いつけて納得しようとしてるだけでしょう