このレビューはネタバレを含みます
宇宙人難民がやってきたことで、地域社会の不満が暴動となり、それを解消するために隔離を計画する。
その「もし」に根ざしたSF感が良い。
この作品世界ではもはや当たり前の存在としてそこにいるエイリアン達だけど、その甲殻類の様な容姿や生態によって、人間から一方的に差別されているのだろう。
冒頭の強制移住に至る経緯やその課程の描写などはドキュメンタリーチックで、「不潔な奴らを一掃するんだ」という人間側の視点を非常にSF的リアル感を持って描いてくる。
“人種”の違いによる偏見や疎外感は、相手の立場に立つことによって見え方が変わってくる。
強制的に視点を変えざるを得なくなった主人公は、次第に人間側が何をしているのかを知るわけだけど、この辺のプロットは王道的。
しかしそれに至る過程はSF以上にホラー風味が加わり、ある種のジャンル映画への愛が垣間見えた。
これは制作のピーター・ジャクソンの影響かもしれないけどね。
終盤のバディ映画的なアクションも見物だが、やはりクライマックスで決めてくるのは「宇宙の戦士」からお約束であるあの兵器。
これでこそSFです!監督・脚本のニール・ブロンカンプは非常にセンスが良い。
醜悪な容姿でも相手に心が見えれば印象が変わるというのは、相互理解の難しさを感じつつ人間の身勝手さが悲しくもある。
この舞台がアパルトヘイトの行われた南アフリカであるというところが、作品に単なるSF作品以上の社会派な深みを与えていると思います。