シネマスナイパーF

第9地区のシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

第9地区(2009年製作の映画)
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エビキッズ可愛い
"変身"の物語でした


オープニング周りが完璧
インタビューとニュース映像で、この世界で何が起こっていて何の物語が始まるのかを伝えつつ、インタビューの内容を見るに、どうやら主人公らしき人物が何かをやらかしたらしいことがわかる
映画内状況説明として常套手段である実録風映像はどんだけつまらん映画でも惹き付けとしては機能するし、まさか彼があんなことを…という説明をそこに混ぜていくとは上手いなぁ
現実と地続きの問題を扱う作品と伝えつつ、エンターテインメント映画としてワクワクもさせる
説明自体は中盤前辺りまでちょいちょいされ続ける感じで、宇宙人が最早地元住民として闇取引とかやっているというのもなんか笑っちまうところだし、一緒になって宇宙生物賭博やってんのとか最高に面白い
あくまで第9地区の宇宙人達は働きアリ的な連中であって頭がいい方ではないという説明もされていますが、これがまたさり気ないながらちゃんと合理的な設定だったりして上手いんだよな
アイデアの広げ方が素晴らしすぎる

主人公は普通の人間なんだよな
エリート企業で昇進街道を歩む、マッチョ系ではないノーマルな会社員
都度都度、自分の置かれる立場によって態度を変えていく人間味がある人物
だからこそこの映画を面白くしているんだよねコイツは
様々な意味合いで"変身"していくわけですよ
あまり深くは言えませんが、コイツが普通の人間であるからこそ、映画がずっとこいつ視点であり続け、物語そのものの視点の変化が常にコイツと共にあり続けている
コイツが"変身"していく様子を外側から捉えながら、物語の立ち位置も変化し、コイツの内面も"変身"していく
面白いSF設定とドラマが同じ動きで観客の心を引っ張るわけですよ
そりゃ面白いと思うに決まってるし、わざわざ台詞で言わずとも、メッセージをこれ以上ないぐらいダイレクトに伝えられる
終盤コイツは、まさに文字通りふたつの目を同居させるわけじゃないですか
主人公のビジュアルが映画のメッセージを体現しているんですよ
そしてラストシーン、言葉こそ発していないけど切ないんですよ
あの見た目ながらやっていることは…と、あの一瞬だけで極めてわかりやすくストレートに作品のメッセージを改めてズドンと腹に叩き込んでエンドロール
もうね…本当素晴らしいとしか言葉が出てこない


宇宙人、軍隊、ギャング、そしてパワーローダーという最高のごった煮エリア第9地区!それだけでも充分楽しい
宇宙人キッズの謎の可愛さ、これは映画上も非常に重要なんだよね
見てくれだけでもそれなりに満足できちゃうクオリティ
アートブック買っちゃいます
数段にも展開が重ねられた終盤の怒涛の戦闘はアツいですが、それもまた様々な視点の変化を凝縮してて見事だし、上手いこと感情を一緒に動かしてくれる
クソ野郎のなけなしの漢気って、完璧超人の活躍よりアツいよね


なんか、感無量です
この映画の存在自体に感動しています
すごい
この映画で一番まともに見える"人物"がクリストファーってのが個人的にグッとくる