けんけん3号

サードのけんけん3号のレビュー・感想・評価

サード(1978年製作の映画)
3.5
「人魚伝説」の影響でATGが懐かしくなり、昔、テレビ東京の日本映画名作劇場で見た本作を再鑑賞。中学生の頃に初めて観た時は性、非行少年、少年院などのワードを意識しちゃう年頃で、自分とは違う重大な経験をしたちょっと年上のお兄さん、お姉さんたちの行動で不安な感情になった印象。日本映画のジメジメした雰囲気、生々しさにくすぶってたと思う。森下愛子がタイプだったので、彼女のヌードは衝撃的だった。
それから人生経験を積んでからの鑑賞になると色々思うことかある。寺山修司が脚本なのでハードルが上がるが、そこまで面白い作品ではない。描いているのは若者の焦燥とエネルギーと無知。分かっているようで見えていない現実。終始暗いし、地方特有の閉塞感が彼らの無力さ、無知さ、希望の持ち違いを上手く描いている。ホームベースのないゴールに向かって走り続ける行為。人とは違う想いはあるが、答えはない。しかも社会的に大事なこと、道徳的に大事なことが分からない。そんな想いを抱えた若者たちが凄いエネルギーをもてあましている様は上手く描けていた。サードは、一生モヤモヤを抱えて生きていくんだろう。サクッと結婚、地元に就職して恋愛をする図書部の二人の短絡的さなども同様。こういう事例は現代でもあるわけで、時代の変化は劇的だが、人間の根本はあまり変化してないんだと気づかされる。食事の嫌がらせ等で分かる通り、やはりガキだと思うし、罪を犯した少年の境遇、周りに良い大人かいなかったんだろうと思う。ここにも地域社会の問題がある。今じゃ地域格差もあり、核家族化してるので、もっと深刻になっているのかも。多くの人間は少年院に行ってないので、全く更生しないサードを色眼鏡で見たら、心に響かない作品。短絡的な犯行をして少年院に来たわけだから共感はできないよね。かなり前の作品なので少年院の中も変化しているだろうが、社会復帰をするための更生プログラムではなく、相手に響いてないのに勝手に喋っている印象。サードのオナラのシーンが象徴的。少年たちと更生させる側のアンバランスは上手く描けている。だから出所後の再犯率が高いんだろうね。その他、性的な描写が印象的だった。図書館での行為はエロさが際立っている。もちろん森下愛子の魅力もあるが、場違いな所での行為はなんともいえない淫美がある。峰岸徹との汗ばむ行為も、性の執着と売春という作業の性のアンバランスがあり、印象的なカットだった。作品は正直面白いわけではないが、ATGの粘着質で刺激的でエロさがあり、答えの出ないモヤモヤが残る日本人特有の雰囲気が出ていて、なんか心に引っかかる作品だった。