このレビューはネタバレを含みます
ピロスマニが養家を出るところから死ぬ直前までを描いた伝記映画。養家の女に手を出したことになっている冒頭。
ピロスマニ役のハマり方と、彼自身の佇まいの説得力が凄かったです。それだけで十分だとすら思えました。
絵画的な構図は効果的ではなかったように思いますが、お店やらの舞台の戯画化が強烈で、箱庭感が演出されていて楽しかったです。
ストーリーは凡庸で、店を畳む辺りの浪花節的な演出はうんざりしましたが、老境に入ってからは、ピロスマニの姿も含めてどんどん惹き込まれるようでした。
復活祭の絵のくだりは痛切に心に残りました。この絵の魅力も素晴らしい。最後に向かう先は束の間の報いか否か、それとも彼自体の復活が描かれていたのか。
苦境にあった人物を苦境のままに描いて感動を乞う映画とは一線を画し、ピロスマニの絵の魅力そのままに、悲劇として理想化されたピロスマニが美しく描かれた作品でした。