半兵衛

緋ぢりめん博徒の半兵衛のレビュー・感想・評価

緋ぢりめん博徒(1972年製作の映画)
3.0
藤純子引退後に彼女の後継者となるやくざ映画の女性スターを登場させようと製作された任侠映画、主役となる中村英子をはじめとして当時の新人女優が複数出演してさらに『大江戸捜査網』などで人気を得ていた土田早苗が加わり万全の体制を敷いてはいるがみな女博徒をやらされている感が強くてお客さんが期待している個性的なやりとりやキャットファイト要素が薄く今一つ弾けない印象に。

それでも藤純子作品ではありえなかった女性のエロスをストレートに押し出した監督と原案である団鬼六による王道やくざ映画への挑戦状のような演出や、ストイックであるがヒロインと寝るヒーロー菅原文太のキャラクターなどの要素が独特なエロチックを醸し出しており捨てがたい魅力を放っている。石井監督の他の映画監督のやくざ映画のパターンとは違うぎこちない演出もかえって面白い。

石井輝男監督作品としては珍しくやくざ映画のエース脚本家高田宏治が参加しているが、いつもと勝手が違うのかそれとも石井監督に脚本をいじられているのかドラマの細部が結構杜撰で見せ場は作っているけれどそれがラストの殴り込みに伏線として結び付きお客の気分をすっきりさせるという任侠映画のカタルシスになっていないのが残念。

安部徹と名和宏という某不良漫画のコンビのような名前の二人による安定した悪役ぶりがドラマを盛り上げる。

ちなみに主役を張った中村英子はその後脇役として何本か映画に出演したのち引退→当時東映のやくざ映画にプロデューサーとして関わっていた山口組三代目田岡一雄の息子田岡満と結婚するという数奇な運命を辿った末、この映画からわずか三年後に夭逝してしまうことに。その背景にある事情はさておき、映画で主役に抜擢されても幸せになれない人生があるのだなと本編での彼女の姿を見るたび思えてくる。
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