ミシンそば

令嬢ジュリーのミシンそばのレビュー・感想・評価

令嬢ジュリー(1951年製作の映画)
3.8
ベルイマンの先輩格ながら、パルムドール受賞作の二本以外は日本で紹介されていないアルフ・シューベルイの二度目のパルムドール(当時は単にグランプリ)受賞作。

原作はストリンドベリの戯曲。
「ファニーとアレクサンデル」で彼が女嫌いであると語られていたが、なるほど。それがありありと伝わる露悪的な空気感が終始漂う。
19世紀の戯曲原作ながら、ジェリーとジャンそれぞれの幼少期のトラウマや、肉体は交われど心は交わらない永遠の断絶なども、時間軸のシャッフルなどを用いて遺憾なく表現されていた。

「ミッドサマー」で一気に日本でも知る人の多くなった夏至祭の熱狂は、何もホルガ村だけの話ではない。
スウェーデン人は夏至にあそこまで解放的になるのか。
白黒で観る夏至祭のアーチや日の沈まない情景も結構乙なものだ。

アマプラでは、あらすじでガッツリネタバレをしてくれちゃっている。
そこに至るまでのジュリーのメンタル状況は、少なくとも自分にはわからないが、母親の呪縛と言うのは結構大きいのだろうか。
両親の思想や一方通行の優しさによって玩具にされ、「自分」をどうやっても形成できなかった令嬢ジュリーの人生、つくづく浮かばれないな。

なお、デビュー間もないマックス・フォン・シドーも出てるが、20代前半とは思えないくらいには老け顔。