三体艦隊

「A」の三体艦隊のレビュー・感想・評価

「A」(1998年製作の映画)
4.0
見方が非常に難しいドキュメンタリー。難しいし、視座を誤ると危険ですらある。
オウム真理教残党VS世間・国家権力
事件後のオウム真理教残党の立場は、誤解を恐れずに言うが「社会的弱者」である。「社会的弱者」に対し、国家権力の陰湿さ・横暴は憚るところはない。国家権力=リヴァイアサンであるという認識が薄い一日本人として、貴重な映像体験であった。
統計的にみて、経済指標や幸福度、格差等現代日本はまさに地獄の様相を呈しており、「社会的弱者」の立場に誰しもが共感しやすく、オウム真理教残党と自己を同一視して、同じ眼差しのもと、社会を見つめやすくなっていると思う。
世間から「社会人になれ/頭が良いのだから一生懸命に働け」等論理のかけらもなく、味方らしき人も敵らしき人も「情緒」で包摂するか攻撃するかしかしてこない。あぁ、これが世間様を唯一神とし、空気を規範とする日本教(山本七平氏の概念)の信者達かと薄ら寒くなった。
にもかかわらず、オウム真理教と自己を同一視してはならないことは、強く言っておく。カルト宗教は往々にして、世俗的欲求の再生産に過ぎないことが多いからだ。
ある知り合い曰く、物質的欲求を否定し、精神世界を重視しているのだと。精神世界には、階級があり…etc。資本主義社会における学歴や役職の宇宙version。劣等感の歪な補償である。
日本社会(=日本教)との付き合い方については、何もカルト宗教だけが道では全然ない。いい加減、世間様の一神教に淫するのは止め、失われつつある共同体、これをいかに回復するのかは、今みなが考えなければいけない課題である。
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