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「A」のunkoのレビュー・感想・評価

「A」(1998年製作の映画)
3.8
オウム真理教代表逮捕後、広報副部長である荒木浩をメインに密着したドキュメンタリー作品。

最初に私自身は無宗教に等しい思考です。
昔、宗教学を夏季だけ講習を受けた際に、日本ではオウムの影響で"カルト"の意味合いがどうしても反社会的な意味合いとして捉えられがちで、
学術的にはただの少数派ということを念頭にと言われた記憶がある。
実際私が通っていた大学は悪質なカルト宗教団体がサークルや同好会を装って数多く存在していたので、頭の片隅には反社会的な意識というのが根付いてしまってはいた。

サティアン(オウム宗教施設)の閉鎖やそこに住む信者の生活にも踏み込んで撮影される。
画面上でフォーカスされる信者の方も同じ人がメインになっているので段々感情移入してくる。
特にこの映像作品では、荒木浩の人物や生き方にスポットが当たっている。広報副部長として、マスメディア、警察、記者会見等、世間と接する側面は殆どこの人物が担っている。
数々の凶悪事件が存在するが、実行犯ではないのに代表として謝罪を要求される。代表として謝罪することは信者の立場/アイデンティティを損ないかねないので不用意な発言はできない。
しかしメディアや地区の人々にはそんなことは関係ないので要求してくる。
どちらの気持ちも理解できるだけに何とも言えない気持ちに。

物語後半、荒木浩はカメラに向かってこう述べる「出家願望が強い。ここからもう一度出家したい。ここ2年は出家する前よりも外界と接する機会が多い」。
彼はご両親に自分の気持ちを伝え、出家をしている。入信後も連絡を取り合っている(顔がさしているので命を狙われるのではないかと心配もされている)。

ラストあたり、監督森達也から出家について厳しい意見をぶつけられる。
逡巡した後、冗談で返すシーンは荒木浩の人柄と答えられない虚しさを感じた。
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