BOB

「A」のBOBのレビュー・感想・評価

「A」(1998年製作の映画)
4.0
フリーのTVディレクター森達也が、オウム真理教の広報部長・荒木浩を中心に、オウム事件以降の彼らに密着取材したドキュメンタリー映画。

本日は3月20日。地下鉄サリン事件から29年ということで、ウォッチリストに眠っていた本作を鑑賞。

よくある「オウム真理教の信者たちはいかにして凶悪な事件を起こすに至ったのか。」ではなく、「オウム真理教の信者たちはなぜ一連の事件後も、オウム真理教を信じ続けるのか。」に迫る作品。

よくもまあこんな映像が撮れたなと驚くばかりである。オウム真理教幹部たちが法的処罰を受ける中、一連の事件に対する説明責任及びメディア対応を求められる広報部長の姿に密着し続ける。教団の記録を残したいとのことで撮影許可が得られたとのことだが、それにしても良く撮れたなと。森達也という男が教団からいかに信頼されていたかが。

人間社会の矛盾が次々と炙り出される。言い掛かりをつけて不当逮捕に出る警察。"マスゴミ"と言われても仕方がない利己的なマスコミ。事件の責任追及に留まらず人間であることも否定し、社会からの排斥を求める住民。

"教団が起こした犯罪の責任は、全ての信者が負うべきか"という問題と、”正義”側に立っていると思っている人間の無制御な暴力性について強く考えさせられた。

ハイライトは、ドキュメンタリービデオが警察による不当逮捕の一部始終を撮影するシーン。警官の仰々しい被害者演技は悪質極まりなかった。サッカーであればシュミレーションで一発レッドカードだ。決して笑いごとではないのだが、あまりの酷い茶番劇に笑ってしまった。

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