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ニキータのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

ニキータ(1990年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

警官を殺した不良娘ニキータが政府の暗殺者として美しく変貌する。
仮の身分を装い、恋人と幸せな生活を送りつつ、任務をこなしていくが、月日が経つにつれ、そんな二重生活に耐えられなくなってゆく…。
物語の骨子は「マイ・フェア・レディ」そのもの。
指導者が粗野で下品な娘をレディではなく、プロの暗殺者に仕立て上げれるかどうかだ。

見どころは、まずニキータを演じるアンヌ・パリローの女優魂を感じる演技力。
廃人のようなジャンキーの不良娘から洗練された美女への変化。
小悪魔のような色気と少女のような傷つきやすさとのコントラスト。
暗殺者として激しいアクションもこなす。

そして何と言っても、指導者であるボブと、恋人のマルコとの切ない三角関係のラブストーリーが良い。
厳しく、時に優しくニキータを育て上げ、非情な任務をそっと見守るボブの愛。
任務で生まれるニキータの心の孤独を癒そうとするのがマルコの愛。
セリフにも有るように、ニキータと彼らなりの愛し方のラブストーリー。
それが本作の本当のテーマだ。

ラストシーンが特に素晴らしい。
言葉は少なく短いシーンだが、想像力を刺激する男2人の演技は秀逸だ。

ニキータからすると、ジャンキーの過去から自分を救ってくれたのがボブ。
社会復帰し人並みの幸せを経験する機会を与えてくれた、育ての親か兄のような存在。
一方、工作員としての、偽りの自分から救ってくれたのがマルコ。
真実を知っても、無償の愛を与えてくれる大切な人。本当の笑顔を教えてくれた恋人。
2人の男性に人生を救われたが、任務の過酷さに耐えられなくなったニキータは、2人に迷惑をかけないよう、姿を消す…。

マルコは追われるであろうニキータを守ってあげたい。
ボブに機密フィルムを渡し、情報は手に入ったのだからもう彼女を追うなと諭す。
ニキータはボブや組織に利用され、さぞ憎んでいるだろうと思いきや、ボブ宛ての手紙を残していた。

手紙には意外にもボブへの感謝の言葉などが記されていて、恐らくそこから読み取れたのは、マルコの知ることのない、訓練生と指導者という間柄を超えたプラトニックな愛。
心底愛した女が自分以外に愛しているもう一人の男の存在と、それが暗殺者に育てたボブということを知り、マルコはショックを受ける。
しかしボブもニキータを愛しているのなら、彼に彼女の身の安全を任せてもいいだろうと思っている。
マルコが手紙を破いたのは嫉妬であり、またニキータを追う手掛かりになるのを防ぐため。
ボブは破られた手紙の内容を察して、またニキータの想いに喜んで、微笑む。

2人とも愛しい女性にはもう会えない。
「お互い、寂しくなるな…」という最後のセリフが重い。

アクションや物語のエピソードは突っ込みどころは多いが、ただの殺し屋が主人公のアクション映画だと思っていると、ラストには胸を掴まれるような切なさが待っている。
今なお亜流を産み続ける「女殺し屋」モノの先駆け。
個人的にはリュック・ベッソン監督の最高傑作。
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