ゆべし

ポイズンのゆべしのレビュー・感想・評価

ポイズン(1991年製作の映画)
3.5
90年代Queer Cinemaムーブメント初期のトッドヘインズの鮮烈な監督デビューにして既に傑作。オムニバス構成の映画は普通何かしら一貫した分かりやすいテーマ設定があるが、この映画が凄いのは3話つの短編がお互い時代設定、ジャンル、物語、映像ルックも全て異なり一見してお互いに何の関連性も無い中、編集ミックスされて一つの長編映画として成り立っている事。他にこんな映画観た事無い。
1話) Hero
撮影当時(90年代初期)のニュース番組風の偽ドキュメンタリー。小学生男子が虐待を受けていた父を射殺て、二階の窓から空を飛んで消えてしまったという母親の不可思議な供述の真偽を追う
2話) Horror
50年代ハリウッドB級ホラー映画をモチーフにしたモノクロ映像ホラーサスペンス。「天才科学者が開発した新薬が体を腐敗させる伝染病になり警察に追われる」ありがちなB級ストーリーをチープな演技、B級サスペンス演出だが50年代ビンテージ感が素晴らしい荒いモノクロフィルム撮影でこのジャンル映画へのディテール固執と再現度が凄まじい。クロネンバーグ的なボディホラー感も有り。
3話) Homo
ジャンジュネの小説(泥棒日記等)をモチーフにした耽美ホモセクシュアル世界観。カラフルで幻想的な映像(おそらく映像的にはジャンコクトーが元ネタ)で、1940年代のヨーロッパの監獄で、お互いに気を引き合う囚人男性二人の関係性を描く。汗と油臭そうなマッチョ男たちをカメラ寄り気味ソフトフォーカス映像でホモエロチックに描く。

この3つの内容も映像もお互いに接点が無い(かの様に見える)3話が切り替わりながら進行する。テーマ性が見出すならそれぞれの話は「社会から疎外された人物」を描いている事で、これはトッドヘインズその後の「セーフ」「エデン」「キャロル」等に続くゲイ映画作家としてのテーマで、この長編デビュー作は彼の原点と言える名作と思う。
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