菩薩

夢見通りの人々の菩薩のレビュー・感想・評価

夢見通りの人々(1989年製作の映画)
4.5
これ本当に凄い…本来90分の枠には収まり切る筈も無い人間模様と悲喜交々がかっちり収まってる控えめに言ってもただの宝石箱…。冒頭のラーメン屋(?)の喧嘩シーンから最高だし、しかも「うちは喧嘩禁止の店やで!」らしいから尚の事良い。タバコ屋の婆ちゃんのくだりでそもそも号泣だし、愛し合う若い二人の駆け落ちの顛末のスッキリさ、商店街のマドンナを巡る争い、悲しさは尾を引かないくせに多幸感だけはいつまでだって持続していく。恋敵の肉屋の兄ちゃん襲撃のくだり、小麦粉で真っ白になった小倉久寛の顔が涙で綺麗になっていくのもいいが、敗残者二人の間に突如芽生える厚い友情とウサギ登場の瞬間が神がかってる。曲者揃いの商店街の面々の中でも取り分けキャラの濃い原田芳雄演じるオカマちゃんに向けられる視線、相互理解・相互扶助から生まれる人生再出発の大いなる決意に更に涙が溢れる。なんなんだあのラストシーンは…小倉久寛の手足が短過ぎるからこそ余計に破壊力が増す…最高過ぎるだろ…。この人間臭さと派手で遊戯めいているが真剣味も併せ持つ喧嘩シーンはやはり森崎東の真骨頂、寅さん3作目もその点に於いては山田洋次を軽く凌駕する。婆ちゃんの入れ歯洗ってやるとこも最高、いやもうずっと最高じゃんこれ…森崎東の人間の捉え方こそ現代に必要とされてるんじゃないのか…また一人偉大な人物を失ってしまった。
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