けーはち

300 <スリーハンドレッド>のけーはちのレビュー・感想・評価

3.4
アケメネス朝のクセルクセス1世とスパルタの王レオニダス1世の戦いを描いた歴史アクション超大作。

★VFXをふんだんに用いた、砂埃の中に暗く淀んだ画面。意図的に構築された「汚れ」の美とでも言うのか。その空間で暴れる筋骨隆々の肉体は画面に荒々しく映える。情報密度はまるで原作のグラフィックノベルそのものだ。

★アクションは、古代ギリシャと言えばおなじみのファランクスなどの隊列を用いた真っ向勝負のシンプルな戦いが主。ここぞという所でスローモーションを多用してキメ所をいちいちじっくり魅せてくれる。

★100万の兵を率いたアケメネス朝ペルシャの侵略に脅かされ、ギリシャの都市国家はみんな態度を決めかねている中、勇敢なレオニダス王の下に屈強な300の兵で圧倒的多数の敵を相手にスパルタは孤軍で奮闘──というのが、ざっくりしたお話。結果としてレオニダスは斃されるのだが、アケメネス朝のギリシャ侵略は頓挫することになる。

★アケメネス朝は文化の違う西欧側からすれば奇妙な格好で神と自己を同一視し「跪け」とか言っちゃうヤバい神秘主義の圧政暴君。一方、古代ギリシャと言えば民主主義の都市国家集合体。連邦国家であるアメリカとかぶる。いわば民主主義や自由を守るために「悪の帝国」と旧弊を破る強引な手段で断固戦いダブルラリアットをかまして自己犠牲で自国を動かしたスパルタの王という、「英雄」の物語なのだ。…って、そもそも古代に近代の自由や人権の概念はあるわけないので、そこらはファンタジーだ。

★とにかく生身のプリミティブさというか、力強い、人間らしい喜怒哀楽に満ちた、パワフルな絵の戦闘が見たかったら、この映画だ。