モカ

300 <スリーハンドレッド>のモカのレビュー・感想・評価

2.7
自分はプラトンの本をよく読むのですが、プラトンの師であるソクラテスの生まれるおよそ10年前、紀元前480年のギリシア連合軍とペルシア軍がぶつかる〈テルモピュライの戦い〉を少しでも味わいたくて観賞。
個人的には歴史に興味があったので、筋肉美はどうでもよかったです。

感想ですが、自分が求めていた物とは違いました。
一応史実に基づいてはいるものの、怪物のような敵は出てくるし、ペルシア軍の王クセルクセス1世はとんでもない設定になってるし、これはもう伝記ではなくファンタジーですね(クセルクセス本人はギリシア遠征に対して消極的で、戦争を嫌っていた温厚な人物だと伝わっています)。

監督も公開当時、イラン政府から「この映画はペルシア人を冒涜するものだ!」と激しく抗議されたらしく、それに対し監督は「本作は正しい歴史を伝えるための映画ではありません」と返答したとか。
なので史実を重んじる人には向いてません。ただ映画の力は存分に発揮されてて、背景から血しぶきまで全方位CGで構成されてたけど、単純に視覚的な迫力はありました。

ちなみに、“300 VS 1,000,000”と銘打ってますが、100万はいくらなんでも盛りすぎ。現実ではギリシア連合軍が総勢6,000~7,000人。うちレオニダス王率いるスパルタ歩兵が300人。戦争終盤、彼らだけ撤退を拒否して最後まで戦い続けます。
対するクセルクセス1世が送り出したペルシア軍は、総勢20万前後だったという説が有力です(諸説ありますが、個人的にはもっと少なかったのではないかと思っています)。
なので、おおよそ
“7,000 VS 200,000”程度?
これでも十分過ぎるほど無茶です。

スパルタ王のレオニダスは当時60歳頃と推定されてますので、ジェラルドが演じるよりも歳を取っていました。
実際、今妻に「よき夫と結婚して、よき子を生め」と言い残してから戦場に出立します。スパルタでは戦場での死が最高の名誉とされていたので、そもそも死の価値観が現代とは違うと思いますが、ともあれ、もう帰らないつもりで戦地に赴いたんですね。
筋肉やアクションが目玉になっている映画ですが、自分はスパルタ軍の正々堂々とした誇り高い精神面を称賛したいです。
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