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マイ・プライベート・アイダホのCinemanのレビュー・感想・評価

3.0
『マイ・プライベート・アイダホ』
ガス・ヴァン・サント監督
1991年公開 アメリカ

・英国映画協会選出「映画史上最高のLGBT映画」第10位

・「死ぬまでに観たい映画1001本 第5版」スティーヴン・ジェイ・シュナイダー総編集・選定作品。

鑑賞日 2023年4月26日 U-next


バイ・セクシャルの男娼たちの青春群像劇です。
本作品とデビュー作の「マラノーチェ」(1986)と「ドラッグストア・カウボーイ」​(1989)はサント監督が青春時代を過ごしたオレゴン州ポートランドで制作されているため、ポートランド三部作と言われています。
私生活でも親友同士のリバー・フェニックスとキアヌ・リーヴスが共演しています。

【Story】
孤児として育ったマイク(リヴァー・フェニックス)は故郷アイダホのハイウェイを一人さまよっているうちにナルコレプシーに陥り幼少期の自分が母親に慰められている夢を見る。

シアトルに戻って男娼で金を稼いで暮らしていたマイクは裕福な女性エレーナに拾われ、エレーナの自宅で男娼仲間で親友のスコット(キアヌ・リーブス)と再会した。
マイクはエレーナと行為を始める直前ナルコレプシーに陥る。
スコットに介抱されるが置き去りにされたマイクはポートランドに戻る。
ポートランドで他の男娼仲間と廃屋のホテルで暮らしていると彼らの父親的存在のボブと再会する。

スコットは自分は市長の息子で21歳になったら父親の遺産を相続して路上生活から身を退くとマイクに打ち明ける。
マイクは別れた母親を探すためにスコットとバイクで故郷アイダホに向かう。
旅の途中でマイクはスコットに愛していると告白するがスコットは自分は同性愛者ではなく金を稼ぐために男娼をしているだけだと返答する。

兄のリチャードから母親と行きずりの男との間に出来たのがマイクで母親は男を殺して逃げたのだと知らされるが、マイクは自分が母親と兄リチャードとの間にできた子だということを知っておりリチャードも認めざるを得なかった。
リチャードはマイクに母親からのハガキを見せて高級ホテルでメイドとして働いていることを伝える。

マイクとスコットはそのホテルを訪ねたが母親はすでに辞めてイタリアに行ったと聞かされる。
2人は母親が暮らしていたイタリアの家に行くがそこに住むカルミラという若い女性から、母親がアメリカに戻ったことを聞かされる。
スコットはカルミラと恋に落ちマイクを置いて2人でアメリカへ帰国してしまう。

一人ポートランドに帰ったマイクは再びボブたちと路上生活に戻る。
スコットは父親の死により遺産を相続して金持ちになっていた。

ボブは高級レストランに入ったスコットに声をかけるがスコットに知らない顔をされ罵倒されて店から追い出される。
ショックで心臓発作を起こしたボブは死んでしまう。

翌日、スコットの父親の葬儀の近くで、マイクとその仲間たちはボブを埋葬する。

スコットと決別したマイクは再び故郷アイダホに戻りハイウェイをさまよう。
ナルコレプシーに襲われたマイクは路上に倒れ通りすがりの2人組にバックパックと靴を盗まれる。
そのあと通りかかった車のドライバーに意識を失ったままのマイクは運び去られる。



マイクは心底スコットを愛していたのにスコットは営業で男娼をやっているだけなのでマイクの愛には応えないのが切ない。
しかも大金持ちになったスコットはマイクたちを知らん顔して追い払う。
なんとも非情な結末だ。

【Trivia & Topics】
*ナルコレプシー。
以前ナルコレプシーの友人がいました。
真っ昼間にとつぜん強烈な眠気が襲って眠り込んでしまう病気です。
睡眠発作です。
打ち合わせの最中「あれ?発言しないな〜」と思って友人を見るといびきをかいて眠っていることがしょっちゅうでした。

*非情なスコットはハリウッド一のいい人。
スコット役のキアヌ・リーブスはハリウッド一いい人で知られている。
「マトリックス」で得た報酬の70%をガン研究に寄付したり、町中で気さくにファンと話をしたり、ファンの結婚式に出席したりホームレスと仲良くなったり、撮影スタッフたちにほとんどの出演料を渡してしまったり、キアヌの資産は500億円以上だと言われていますが惜しげもなく他人のためにお金を使ってしまいます。

*完全菜食主義者
子供時代に両親がヒッピーで怪しげな教団に属していてリバーは4歳で童貞喪失したそうです。
その後両親がその教団に嫌気がさしてその反動(?)でヴィーガンとなったのでリバーも生涯ヴィーガンでした。
飼い犬までヴィーガンで育てました。
1983年にオーバードーズ(過剰麻薬摂取)で死去しましたが散骨されたために彼のお墓はありません。
本作でヴェネツィア国際映画祭男優賞受賞。

*監督もまた。
ガス・バン・サント監督もゲイであることをカミングアウトしています。

*大絶賛
「死ぬまでに観たい映画1001本 第五版」では“本作品は感動的でガス・バン・サント作品の最高傑作であり完璧な映画だ”と書かれています。


好きな映画と言えませんが映像の力で最後まで観ることが出来ました。

【5 star rating】
☆☆☆
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