豚

マイ・プライベート・アイダホの豚のレビュー・感想・評価

3.4
この映画はどこからが夢で、どこからが現実なんだろうか

ナルコレプシーの男娼のマイクと、その親友であるスコットとともにアイダホを目指すロードムービー。
全編を通して非常に淡々とした描写が特徴的で、分かりやすい盛り上がりが少ない低血圧さに包まれている作品。
ある種演劇的というか…話の面白さよりも登場人物の会話や演技で進んでいく感じ。

ロードムービーというジャンルではあるけれど、その道程にあまり意味はなく主人公たちが逗留する街を中心に描かれている。
同性愛、ドラッグ、近親相姦、貧富の格差などなど、さまざまな社会問題が主人公の日常と地続きなものの、だからといってそこが映画の主題ではないのが潔いなぁと感じた。

原作がシェイクスピアだからなのか?
かなり詩的で幻想的なカットが挟まるのも特徴的。
家が降ってくるシーン、豪快すぎて笑ってしまった。
なんというか、今の時代のカメラじゃ早々撮れないザラついた質感の風景やカットがとにかく印象に残った。
ある種ヒッピー的な哲学を抱えた作品というか。
というかアメリカンニューシネマの残滓みたいな怨念も感じる。

「男娼」という結びつきがあるふたりは同じように見えても、実はまったく立っている場所が違っていて、そのすれ違いを見ないようにしながら進んでいく物語が切ない。
最後、スコットは何を思いながら眺めていたんだろうな。
色んなシーンの答え合わせがない作品。

主演はリバーフェニックス、美しい…。
助演はキアヌリーブス、これまた美しい…。
ていうかレッチリのフリー出てんの!?
それが一番びっくりした。
監督のガスヴァンサントの作品はほとんど観たことないんだけど、割と初期の作品だけあってか、作家性がすごく出ていて興味深かった。

強烈な閉塞感とオフビートな雰囲気が包む物語。
何も語ってこないけど、何かを感じられる作品かなと思います。
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