海

マイ・プライベート・アイダホの海のレビュー・感想・評価

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靴の一足分だってないはずの、距離のつめかたがわからない。ひとは自らを実感するために常時他者を必要とするのですなんてわかったように言ってみてもあなたを必要とするその方法がわからないならまるで意味のない言葉だ。あなたへと向かいわたしの中で起こる波。身をまかせて流れつづけるために、死ぬまで時間をつかいつづけたってきっともう足りはしないと気づいてる。たった一夜のできごとにわたしは、一生をかけて沈んでいかないと追いつけない。くちに何かをいれてみたところで、もう咀嚼もできない。舌さえうごかない。わたしを見つめるあなたの目が動物園の象よりもやさしかったことを思い出すと、象は柵をこえアフリカへ帰ろうとする。伸ばした指の付け根から先までわたしの全部がさびしがるあなたを恋しがる、あんなに探してもなかったものがどこにでも落っこちててなりたいようにはいつもなれなくてあなたが言ったことの全部がいつまでも可笑しくて波がとまらない、あなたが入ってくる。つぎのわたしの誕生日が来たらたくさんの猫を買って。夢でもまともでもないわたしの中はあなたの知らない味がする。
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