スタンダード

愛についてのキンゼイ・レポートのスタンダードのレビュー・感想・評価

4.0
【紀元性1年6月23日】
『アルフレッド・キンゼイ誕生』


イエス・キリストが生まれた翌年を
西暦とするならば、

アルフレッド・キンゼイが生まれた翌年を
"性"暦とします。


幼少期から青年期にかけてのキンゼイは
父親の保守的な言動に嫌気が指しており、
父親が敷いたレールに乗らず
我が道を選んだことで、
半ば勘当同然の扱いを受けます。


【性暦27年】
『キンゼイ、クララ・マクミランと結婚』


キンゼイは妻クララとの性生活を
正しい治療法により
円滑化できた経験から、
昆虫学で身に付けた標本技術を生かし
とあるレポートの作成を決意。


レポート作成にあたり、
キンゼイは助手として
青年クライド(ピーター・サースガード)
を雇い入れ、
共に同性愛者へのインタビューを開始。


その調査の中でキンゼイは、
自身の中にあった疑念を確信に変えてゆく。


キンゼイ(夫)
クララ(妻)
クライド(助手)
三者の関係性は奇しくも、

『ワンダー・ウーマン』
の生みの親である心理学者、
"マーストン教授"が築いた家庭環境
と非常に酷似しています。


【性暦53年5月2日】
『マーストン教授死去』


奇しくも、
キンゼイが最初のレポートを発表する
前年のことであった。


ワンダー・ウーマンは今もなお、
世間に多大なる影響を与え続けています。


【性暦54年】
『キンゼイ・レポート(男性版)発表』


そのセンセーショナルな内容に、
世間からの注目は高まります。


しかし高名となった結果キンゼイは、
FBI長官のJ・エドガーから
レポートの内容を元に
敵対視されてしまうのです。


キンゼイを執拗に攻撃する
J・エドガーの姿は、
自身の価値観に
息子(キンゼイ)を押し込めようとした、
父親の姿と酷似しています。


【性暦59年】
『キンゼイ・レポート(女性版)発表』


まさか父親は、
出来損ないのレッテル
を貼っていたはずの我が子(キンゼイ)が、
自身の良き理解者になろうとは
夢にも思わなかったでしょう。


J・エドガーもまた、
生前に保管していた機密文書を
秘書に全て廃棄させたにも関わらず、
クリント・イーストウッドの手により
自身のパーソナルな面を映画化されるとは
夢にも思わなかったでしょう。


そしてキンゼイもまた
自身の興味本位で始めたことが、
誰かの愛を正しく導くことになるとは
夢にも思わなかったのです。


【性暦62年8月25日】
『アルフレッド・キンゼイ死去』


【性暦78年5月2日】
『J・エドガー死去』


【性暦110年】
『愛についてのキンゼイ・レポート公開』


【性暦117年】
『J・エドガー公開』


エドガーの右腕となり、
公私ともに親密な間柄となる
クライド・トルソンを、
"アーミー・ハマー"が演じる。


【性暦123年】
『ワンダー・ウーマン公開』


その同年に同性愛を描いた
『君の名前で僕を呼んで』が公開され、
ティモシー・シャラメの相手役を
"アーミー・ハマー"が演じた。


【私は正常か?】


キンゼイからインタビューを受けた
協力者の多くは最後に、
『私は正常?』
とキンゼイに質問します。


人はみんな変態であるにも関わらず、
『不都合な真実を隠した世界』
で生きているため、
『私だけが異常なのでは?』
と常に不安がつきまとうのでしょう。


しかし、
『私は正常?』
と疑問に感じることは、
正常なことなのかもしれません。


『私は正常だ!』と信じて疑わず
己に疑問(?)を持てない人間は、
いつしか自己のタガが外れてしまい
超えてはいけない一線を超えてしまう。


そうはならないように、
正常になろうとするのではなく
異常である自己を受け止めて、
周囲に自分を理解してもらえるよう
工夫しながら生きていくしかないのかも。
時間はかかるでしょうが…。