tak

Sweet Rain 死神の精度のtakのレビュー・感想・評価

Sweet Rain 死神の精度(2007年製作の映画)
3.0
 伊坂幸太郎の小説を映画化したファンタジー。金城武扮する死神”千葉”は、人の最期の7日間につきそい、そのまま死を「実行」にうつすか、「見送る」かのジャッジを行うのが仕事。何故か彼が現実世界で仕事をするときはいつも雨。上司(?)にあたる黒い犬が一緒だ。こんな主人公の設定を観る側に理解させようとするファーストシーンは、実に丁寧なつくりだ。彼が仕事に出る前のモノレールの線路を用いた幻想的な場面もなかなか印象的である。

 ところが・・・そっからである。1985年と2007年、2028年の3つの時代を舞台にして死神がかかわる3つの仕事。それらが運命の糸でつながっていくお話なのだが、ラストの展開は見当がついちゃうし、正直なところ、勘のいい人ならばポスターの絵柄を見た瞬間に結末は見えてしまうかもしれない。それに何よりも残念なのは時代の描かれ方だ。小西真奈美扮する一恵の、最期の7日間を担当する1985年のパート。電機メーカーの苦情係である一恵。死神金城は、会社の前のCDショップで視聴しながら彼女が会社を出るのを待っている。確かに店員は、あの頃ぽい、おおきなセルフレームのメガネ(大江千里みたいな)をかけてる。でも8センチCDのシングルが85年当時にあんなに店に並んでいたか?、といえば違う。村上淳扮する同僚の死神と、「俺たちはプロデューサー。ミュージックでもプロデューサーがいちばん偉いんだ。」と会話するが、日本の音楽界でプロデューサーが脚光を浴びたのは、むしろ90年代に入ってからだと思うのだ。だから、2007年のパートとの違いが強調されず、説得力にどうしても欠ける。吹越満プロデューサーの行動も普通じゃないし。うーむ。

 金城武は、こういう居心地の悪そうな役柄はうまい。「醜い」を「見にくい」と取り違える”ボケ”も、この人ならねと思えるから不思議。小西真奈美を目当てに観たのだが、薄幸な娘の役柄を上手に演じているし、役柄の名義で歌った主題歌も素敵だ。死神金城の成長物語としては、ちょっと物足りなさも。最後に、上司たる黒犬に再度登場して欲しかったな。
tak

tak