b0hhl

男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼けのb0hhlのレビュー・感想・評価

4.0
17作目。ヒロイン太地喜和子。冒頭vs人食いザメ。起承転結が効いてて、また観たくなりそうな一作。静観先生とかつての恋人志乃さん(岡田嘉子さん)との品のあるやりとりが印象的に残った。

少し調べると、岡田嘉子さんは戦前にソ連へ亡命して、戦中戦後の苦しい体験を経て、日本へ一時帰国している時に本作に出演したとのこと。

下記は読んだレビューからの引用ですが、印象に残ったので転記。
---
愛人と手を取って南樺太の国境線を越え、亡命したが、運悪くスターリンの大粛清の最中だったこともあり、愛人は銃殺、岡田さんも10年もの間
厳しい収容所で強制労働を強いられた。

10年間の収容所生活から解放された岡田さんはモスクワ放送のアナウンサーになって後に滝口慎太郎氏と結婚,彼の死後、1972年に滝口氏の遺骨とともに、宇野重吉さんらが出迎える中、実に34年ぶりの帰国を果たす。

この「夕焼け小焼け」に出演した当時、岡田さんは一切そのことを人にもスタッフにも言わなかったためこの衝撃の事実がわかったのはその後、ソ連に戻ってからだという。
---

これを踏まえて、静観先生とのやりとりでの志乃さんのセリフ。

「私、近頃よくこう思うの。人生に後悔はつきものなんじゃないかしらって。ああすればよかったなあ…という後悔と、もうひとつは、どうしてあんなことしてしまったのだろう…、という後悔…」

岡田嘉子さんから発するこのセリフは、岡田さんだからこそのセリフにも思え、とてもよく伝わってきた。後悔を無くせればいいけど、人生にはつきものなんだよなぁ、そういうのたくさんあるなぁとしみじみ感じた。

岡田嘉子さんは14年後に日本を去り、ソ連に戻って、かの地で独り寂しく永眠されたとのこと。
b0hhl

b0hhl