1960年(昭和35年)のモノクロームのフランス映画。上映時間98分。
4Kデジタル・リマスターを2K化したモノをレンタルDVDにて鑑賞致しました。
7月14日の巴里祭。
兵隊さんたちのパレード。
ヒロイン=女将さんがやりくりをしているパリのカフェでは常連客さんがアルジェリア戦争のことを口にしています。
当時のフランスは泥沼の植民地紛争の真っ只中だったのです。(この戦争に関しては2007年のフランス映画『いのちの戦場 -アルジェリア1959-』を御覧になることをお薦め致します)
そんなカフェの女将さんの前にとある人物が登場します。
それはひとりのホームレスのおじさんです。
カフェの女将さんはなぜかその人物がとても気になるようです。
彼女は彼の後を追います。
このあたりの描写は昨今の映画と比べると冗長な感じです。
ですがカフェの常連客の皆さんたちと一緒にいる序盤のシーンの喧騒から一転し、ふたりのキャラクターだけのゆっくりとした空間がなんだかファンタスティックな雰囲気を醸し出している感じです。
なぜヒロインがホームレスのおじさんを気にするのか?
やがてそれが語られることになります。
彼女の最愛の夫は世界大戦の最中にナチスに捕まり、強制収容所に送られ、帰ってこなかったというのです。
このホームレスおじさんは最愛の夫かもしれない。
しかし、彼は記憶喪失で昔のことを何も覚えていませんでした。
果たして彼は夫なのか?
もしそうなら記憶が戻るかもしれません。
果たして…。
常日頃、カラー作品ばかり観ておりますと、モノクロームの映像がファンタスティックに感じられました。色彩がないというのも面白いものです。戦争映画『史上最大の作戦』などはわざとモノクロームで作ったということでしたが、後年カラー化されたりも致しました。私はカラー化しなくても十分出来の良いモノクロ映画だと思ったものです。
実は、だいぶ前に『ラジオ名画劇場』にて今は亡き淀川さんが誉めていた本作をこのほどやっと鑑賞したわけです。
『シェルブールの雨傘』もそうですが戦争に対する描きかたが邦画やハリウッド超大作とチョッと違うあたり、フランス映画独特の味わいを感じた次第です。