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白い國境線のイシのレビュー・感想・評価

白い國境線(1950年製作の映画)
3.5
1947年、敗戦国となったイタリアのある小さな村に連合軍が入ってくる。占領された村の真ん中には、イタリアと旧ユーゴスラビアの国境線として白線が引かれ、二つの国の名前を記した看板が立てられた。かつて、貧しいながらも人々がにぎやかに行き来していた大通りには検問所がつくられ、機関銃を持った兵士たちが国境線とともに村人たちを監視していた。
自分の畑を強制的に白線の向こうに接収された家族。越境する際に撃たれてケガを負った捕虜の男。町の教会もふたつに分けられ、子どもたちが手作りの荷車に乗ってレースをした遊び場の丘も、国境線によって二つに分断された。

雨に濡れれば消えてしまいそうな白線は、それだけで人々の心まで分断した。
イタリア圏の西側は元ファシズムの敗戦国、ユーゴスラビア圏の東側は共産圏の貧しい国、とたがいに罵り合い石を投げる。
共に暮らしていた人々の心はギクシャクしてゆく。
大人たちのささくれだった様子は、子どもたちの心にまで影響を与え始める。

この間まで一緒にレース遊びをしてたのに、どうして突然禁止されてしまったのか。
意味も分からずケンカを繰りしていたある日、ふとしたことから子どもたちは、看板を抜いてしまえば? と思いつく。
「この丘のほうまでは、見張りなんか来るもんか」
「ただ自由に遊びたいだけなんだ」
そうやって看板を燃やしてしまった子どもたち。やっと元通りに遊べるようになった――そう思ったのもつかの間、看板が消えてしまったことに、警備隊が気づいてしまう。
「だれがやったんだ」と犯人探しが始まる。

不満のたまっていた村人たちは、犯人捜しの中、西側と東側で一触即発の事態に陥る。
「機関銃での戦争が始まるかもしれない」「今夜8時から……」
緊張の高まる中、一人の少年が、事実を皆に伝えようと夜の丘へと向かった――。

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ネオ・レアリスモの次の世代、「平和に生きる」なども監督したルイジ・ザンパの切実な映画。
戦火の残り火がくすぶるヨーロッパ大陸で生きる人たちのドラマ。

戦争を体験した人たちには普通の生活もありました、と言うのが最近の流行りな気がするけど、1950年、後ろを振り返ればすぐに戦争のあった時代に、ほとんど同時代の一つの村の様子を、どこかコミカルに、恋愛要素などもいれながら、映画にしてみせたことがとても素晴らしいと思う。

みんなが普通に見れるようになったらと願う映画の一つです。
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