けーはち

ペイルライダーのけーはちのレビュー・感想・評価

ペイルライダー(1985年製作の映画)
3.3
何処からともなく現れた風来坊なヒーローが悪党退治して去るという典型の西部劇だが、無駄をそぎ落として突き詰めればそれはエレガントな様式美。舞台はカリフォルニアのシエラネバダ山脈の雪の峡谷で、西部らしい灼熱の荒野よりも本作のトーンに似合う。旅の牧師は斑の白馬に跨って現れ、敵ボスの悪徳保安官の手下が「荒野の七人」よろしくズラリ揃っても何のその難なく倒す黙示録のペイルライダー=死神らしい活躍ぶり。007(私を愛したスパイ、ムーンレイカー)に出た218㎝の巨漢リチャード・キールをハンマーで打倒するシーンはゴリアテを倒すダビデのくだりをイメージしたのだろうか。シングルマザーとその娘にもモテて言い寄られても袖にして彼女らに身近な人への愛を説く。過去を語らずただクールに敢然と敵を倒すヒーローの聖書に準えた神格化と言えばそれだけだが、イーストウッドの勇姿がバチッとキマッた正統派な画の中に、酔っ払いが滅多撃ちされるマカロニ的な残虐シーンを魅せもする西部劇の総括的な一本と言える。