喜連川風連

弓の喜連川風連のレビュー・感想・評価

(2005年製作の映画)
4.5
手塚治虫の奇子のようなある環境に閉じ込められ育った女の話。老人に飼われた少女に向けられる視線は、欲望か?愛か?美学か?

痴人の愛や雪国しかり中年男の少女に捧げられる欲望はなぜこうも気持ち悪いのだろう。

少女の体を洗う老人、手を握らせるルーティン、どれも6歳の子どもに行うなら自然だが、それを17歳の女に行う。

老人は脳内のルールの中で、少女を弄び、ルール(ルーティン)をこなすことを生き甲斐にしていた。

犯すチャンスは何度もあるにも関わらず、それは決してしない。

そこにエロティシズムは介在せず、己の美学の追求にのみ、関心が向けられている。まるで理想の作品を作る職人のように。

少女を丸10年かけた絵画だと思うとわかりやすい。そこに性欲は存在せず、ただ理想の絵画(少女とその生活)を作りたいという想いだけが存在している。

この狂気が、キム・ギドク本人とも重なっているようでならない。

様式美の果てに、少女の処女性は老人の自殺とともに捧げられ、儀式は完成する。

キム・ギドクさん、寺山修司や石井輝男とか好きそう。悪辣なものの中にある美しさ。キム・ギドク作品の語らない作風がとても好き。音楽と芝居が饒舌に語る。
喜連川風連

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